新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金と雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の矛盾について
新型コロナウイルス感染症休業支援金・給付金(以下、休業支援金とする)は雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金(以下、雇調金とする)を申請している人を侮辱しているような制度です。
厚労省は「まずは雇用調整助成金の活用をご検討ください」と言っていますが、休業支援金の制度ができたことにより、雇調金の申請を勧めることができません。
社会保険労務士としては、矛盾している制度である休業支援金ではなく、雇調金を申請してもらうことを希望しますが、経営者様が決めることです。倫理観の問題ですが、原資がなければ、そうも言ってはいられません。また、倫理観のある人間ばかりだと良いのですが、制度というものは「不法でなければ良い」と考える人間を退けるように作る必要があります。
以下は、厚労省の休業支援金ページで示された例に基づいて休業支援金と雇調金をそれぞれ計算したものです。画像が荒いため、詳しくはpdfファイルをご覧ください。小数点以下は多少のずれがあることはご容赦ください。
なお、私の計算方法がおかしい場合は、是非、ご意見をメールでいただきたく存じます。
厚労省は「まずは雇用調整助成金の活用をご検討ください」と言っていますが、休業支援金の制度ができたことにより、雇調金の申請を勧めることができません。
社会保険労務士としては、矛盾している制度である休業支援金ではなく、雇調金を申請してもらうことを希望しますが、経営者様が決めることです。倫理観の問題ですが、原資がなければ、そうも言ってはいられません。また、倫理観のある人間ばかりだと良いのですが、制度というものは「不法でなければ良い」と考える人間を退けるように作る必要があります。
以下は、厚労省の休業支援金ページで示された例に基づいて休業支援金と雇調金をそれぞれ計算したものです。画像が荒いため、詳しくはpdfファイルをご覧ください。小数点以下は多少のずれがあることはご容赦ください。
なお、私の計算方法がおかしい場合は、是非、ご意見をメールでいただきたく存じます。
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金制度と雇用調整助成金の違い |
【具体的例】
所定労働日数:22日 所定休日:土日祝 月給制:1日当たりの賃金 12,727円(=通常の賃金日額)と仮定する。
なお、3か月総賃金は3月(30万円)、1月(28万円)、12月(26万円)の合計84万円と厚労省の休業支援金ページQ&Aの「4.休業前賃金」
と「5.支援金・給付金」の例の通りとする。
(例1)1か月、終日(31日)休業した場合(休業支援金は休業手当を支給されないことが前提)
① 雇調金(労使協定書で100%支給と仮定)の賃金計算
22日×12,727円=279,994円
② 休業支援金・給付金の賃金計算
3か月間の総賃金/3か月間の暦日数×80%となり、
84万円/90日×80%=7,466円(1日当たりの平均賃金)
休業した月の暦日数が31日あったとして
31日×7,466円=231,446円
(例2)1か月のうち、10日出勤し、12日会社の指示で休業した場合(休業支援金は休業手当を支給されないことが前提)
① 雇調金(労使協定書で100%支給と仮定)の賃金計算
10日×12,727円+12日×12,727円=279,994円
② 休業支援金・給付金の賃金計算
休業した月の暦日数が31日あったとして、休業支援金等の概要では10日出勤、21日休業日(所定休日も含まれる)となる
10日×12,727円+21日×7,466円=284,056円
(例3)1か月のうち、21日出勤し、1日会社の指示で休業した場合 (休業支援金は休業手当を支給されないことが前提)
① 雇調金(労使協定書で100%支給と仮定)の賃金計算
21日×12,727円+1日×12,727円=279,994円
② 休業支援金・給付金の賃金計算
休業した月の暦日数が31日あったとして、休業支援金等の概要では21日出勤、10日休業日(所定休日も含まれる)となる
21日×12,727円+10日×7,466円=341,927円
たとえ、雇調金が最大限である100%の支払いだったとしても、(例2)以上の出勤をすれば、休業手当を支払わず、休業支援金を申請した会社の方が有利になるような制度です。雇調金の支払いが80%であれば(例1)から休業支援金の方が有利です。
所定労働日数:22日 所定休日:土日祝 月給制:1日当たりの賃金 12,727円(=通常の賃金日額)と仮定する。
なお、3か月総賃金は3月(30万円)、1月(28万円)、12月(26万円)の合計84万円と厚労省の休業支援金ページQ&Aの「4.休業前賃金」
と「5.支援金・給付金」の例の通りとする。
(例1)1か月、終日(31日)休業した場合(休業支援金は休業手当を支給されないことが前提)
① 雇調金(労使協定書で100%支給と仮定)の賃金計算
22日×12,727円=279,994円
② 休業支援金・給付金の賃金計算
3か月間の総賃金/3か月間の暦日数×80%となり、
84万円/90日×80%=7,466円(1日当たりの平均賃金)
休業した月の暦日数が31日あったとして
31日×7,466円=231,446円
(例2)1か月のうち、10日出勤し、12日会社の指示で休業した場合(休業支援金は休業手当を支給されないことが前提)
① 雇調金(労使協定書で100%支給と仮定)の賃金計算
10日×12,727円+12日×12,727円=279,994円
② 休業支援金・給付金の賃金計算
休業した月の暦日数が31日あったとして、休業支援金等の概要では10日出勤、21日休業日(所定休日も含まれる)となる
10日×12,727円+21日×7,466円=284,056円
(例3)1か月のうち、21日出勤し、1日会社の指示で休業した場合 (休業支援金は休業手当を支給されないことが前提)
① 雇調金(労使協定書で100%支給と仮定)の賃金計算
21日×12,727円+1日×12,727円=279,994円
② 休業支援金・給付金の賃金計算
休業した月の暦日数が31日あったとして、休業支援金等の概要では21日出勤、10日休業日(所定休日も含まれる)となる
21日×12,727円+10日×7,466円=341,927円
たとえ、雇調金が最大限である100%の支払いだったとしても、(例2)以上の出勤をすれば、休業手当を支払わず、休業支援金を申請した会社の方が有利になるような制度です。雇調金の支払いが80%であれば(例1)から休業支援金の方が有利です。
通常賃金(固定給)が著しく変動した場合は社会保険料の随時改定が可能
社会保険料(健康保険・厚生年金)は随時改定という制度があります。毎年4月から6月の給与で1年間の社会保険料の金額が決定しますが、通常賃金(固定給)が著しく変動した場合は、随時改定により社会保険料が変わります。
コロナにより、6月25日に随時改定の制度も特例が出ています。詳しくはブログ「コロナによる休業1か月で健康保険・厚生年金の標準報酬月額算定の特例」をご覧ください。日本年金機構のご案内はこちら。
雇調金で100%の休業手当が出ている場合、ほぼ利用することはないと言えるでしょう。しかし、休業支援金の場合、通常賃金が下がると随時改定が可能となります。本来は4か月目から社会保険料が下がりますが、上記の特例により、2ヵ月目から社会保険料が下がります。
上記の(例2)で随時改定を行った場合(40歳未満・兵庫県の企業に勤務)を仮定します。(健康保険は協会けんぽの場合、各都道府県によって保険料率が違います)
健康保険は21等級から9等級に下がります。厚生年金は18等級から6等級に下がります。
それにより、
会社負担(39,816円)+労働者負担(39,816円)=合計(79,632円) ➡ 会社負担(17,917円)+労働者負担(17,917円)=合計(35,834円)
となります。
この際に労働者が貰う通常賃金+休業支援金=101.45%です。
通常賃金+雇調金(100%支給)=100%です。労働者は同じ金額を貰っているにもかかわらず、社会保険料が会社も労働者も減額されます。
このような制度は、正しい形と言えるのでしょうか。
緊急事態宣言により4月と5月が終日休業であった場合、休業手当を支払わずに休業支援金を申請し、随時改定を行うと5月分の社会保険料は最低等級となります。
コロナにより、6月25日に随時改定の制度も特例が出ています。詳しくはブログ「コロナによる休業1か月で健康保険・厚生年金の標準報酬月額算定の特例」をご覧ください。日本年金機構のご案内はこちら。
雇調金で100%の休業手当が出ている場合、ほぼ利用することはないと言えるでしょう。しかし、休業支援金の場合、通常賃金が下がると随時改定が可能となります。本来は4か月目から社会保険料が下がりますが、上記の特例により、2ヵ月目から社会保険料が下がります。
上記の(例2)で随時改定を行った場合(40歳未満・兵庫県の企業に勤務)を仮定します。(健康保険は協会けんぽの場合、各都道府県によって保険料率が違います)
健康保険は21等級から9等級に下がります。厚生年金は18等級から6等級に下がります。
それにより、
会社負担(39,816円)+労働者負担(39,816円)=合計(79,632円) ➡ 会社負担(17,917円)+労働者負担(17,917円)=合計(35,834円)
となります。
この際に労働者が貰う通常賃金+休業支援金=101.45%です。
通常賃金+雇調金(100%支給)=100%です。労働者は同じ金額を貰っているにもかかわらず、社会保険料が会社も労働者も減額されます。
このような制度は、正しい形と言えるのでしょうか。
緊急事態宣言により4月と5月が終日休業であった場合、休業手当を支払わずに休業支援金を申請し、随時改定を行うと5月分の社会保険料は最低等級となります。
令和2年4月分(5月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表 |
いろいろな形を想定すれば、ますます矛盾が出てくる休業支援金
雇調金は売上減少など要件がありますが、休業支援金は休業手当を会社が支払ってくれないという要件しかありません。
仮に、コロナの影響が全くない会社が3密を防ぐために交代勤務をした上で休日出勤をした場合、休業支援金を申請するのは正しいのでしょうか。
22日出勤が15日出勤になったと仮定します。会社は7日分の賃金を支払わなくて、休業支援金を申請します。
休日出勤のため割増賃金が発生しますが、相対的に見て給与と社会保険料という固定費が下がりますね。その上、3密を防ぐこともでき、中小企業(個人事業主含む)にとってはメリットとなります。
また、休業支援金は大企業は申請できません。大企業に含まれる派遣会社に勤めている労働者にとっては、非正規にもかかわらず、国の支援が全く行き届いていません。
なお、雇調金は『課税』で休業支援金は『非課税』のため、休業支援金の場合、所得税が下がります。来年は非課税世帯が増えるかもしれません。
仮に、コロナの影響が全くない会社が3密を防ぐために交代勤務をした上で休日出勤をした場合、休業支援金を申請するのは正しいのでしょうか。
22日出勤が15日出勤になったと仮定します。会社は7日分の賃金を支払わなくて、休業支援金を申請します。
休日出勤のため割増賃金が発生しますが、相対的に見て給与と社会保険料という固定費が下がりますね。その上、3密を防ぐこともでき、中小企業(個人事業主含む)にとってはメリットとなります。
また、休業支援金は大企業は申請できません。大企業に含まれる派遣会社に勤めている労働者にとっては、非正規にもかかわらず、国の支援が全く行き届いていません。
なお、雇調金は『課税』で休業支援金は『非課税』のため、休業支援金の場合、所得税が下がります。来年は非課税世帯が増えるかもしれません。
私は休業支援金ではなく雇調金の申請をお願いしています
休業支援金はあくまで暫定的な措置であり、私は休業手当の支払いは雇調金が正しいと思っています。
コロナについては不可抗力(天災)の要素があり、私は休業手当の義務がないのではないか(労働基準法違反にならない)と考えています。しかし、ほとぼりが冷めた頃に労働局(労働基準監督署)がどう動くかわかりません。
最終的には、裁判が起きて司法に委ねる可能性もあります。
経営者の皆様には、休業支援金の方が有利だとわかっていても、雇調金の申請が可能であれば、雇調金の申請をお願いいたします。
コロナについては不可抗力(天災)の要素があり、私は休業手当の義務がないのではないか(労働基準法違反にならない)と考えています。しかし、ほとぼりが冷めた頃に労働局(労働基準監督署)がどう動くかわかりません。
最終的には、裁判が起きて司法に委ねる可能性もあります。
経営者の皆様には、休業支援金の方が有利だとわかっていても、雇調金の申請が可能であれば、雇調金の申請をお願いいたします。